病態
低血糖とは、血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が正常よりも低下した状態を言います。
ブドウ糖は、犬の体や脳を動かすための重要なエネルギー源です。
そのため、血糖値が低下すると全身に十分なエネルギーが供給されなくなり、元気がなくなる、ふらつく、震えるなどの症状が現れます。
さらに低血糖が進行すると、脳へのエネルギー供給が不足し、けいれんや意識障害、昏睡などの重篤な状態に陥ることがあります。
犬では一般的に血糖値が60mg/dl未満の場合、低血糖が疑われます。
ただし、症状の現れ方には個体差があります。
原因
犬の低血糖にはさまざまな原因があり、年齢や体格、基礎疾患などによって異なります。
主な原因は以下の通りです。
①子犬・小型犬
子犬や超小型犬は、肝臓に蓄えられている糖の量が少なく、血糖値を維持する能力が十分ではありません。
そのため、食事の間隔が長く空いたり、寒さやストレス、下痢・嘔吐などで体力を消耗したりすると、低血糖を起こすことがあります。
②食事不足・絶食
食欲不振や長時間の絶食、栄養不足などによって、血糖値を維持するためのエネルギーが不足し、低血糖を引き起こすことがあります。
③インスリノーマ
膵臓にできる腫瘍の一種で、インスリンが過剰に分泌される病気です。
インスリンには血糖値を下げる働きがあるため、過剰に分泌されることで低血糖を繰り返すようになります。
④肝臓・内分泌疾患
肝臓は糖を蓄え、必要に応じてブドウ糖を作り出す働きをしています。
そのため、重度の肝疾患などによって肝機能が低下すると、低血糖を引き起こすことがあります。
また、副腎皮質機能低下症(アジソン病)などのホルモン異常も原因の一つです。
⑤感染症・中毒
重度の感染症や敗血症では、体内の糖の消費量が増加し、低血糖を引き起こす危険があります。
症状
低血糖の症状は、血糖値の低下の程度や進行速度によって異なります。
主な症状は以下のとおりです。
初期~軽度の症状
・元気がなくなる、ぐったりする
・食欲が低下する
・体が小刻みに震える
・ふらつく、歩き方がおかしくなる
・力が入りにくくなる
重度の症状
・起立困難、強い脱力
・筋肉のけいれん
・意識がぼんやりする
・呼びかけへの反応が鈍くなる
・失神、意識消失
・全身性のけいれん発作、昏睡
初期には一時的に元気が戻ることもありますが、再び低血糖を起こす可能性があります。
症状が改善した場合でも、早めに動物病院を受診しましょう。
診断
低血糖が疑われる場合には、血糖値の測定と、原因を特定するための検査を行います。
①血糖値の測定
血液検査や血糖測定器を使用し、血液中のブドウ糖濃度を確認します。
②血液検査
血球計算や血液化学検査を行い、肝臓・腎臓の機能、炎症の有無、電解質などを確認します。
③ホルモン検査
副腎皮質機能低下症やインスリノーマなどが疑われる場合には、ホルモン検査を行います。
④画像検査
超音波検査やCT検査などによって、膵臓や肝臓などの臓器に異常がないかを確認します。
治療
治療では、まず低下した血糖値を改善し、その後、原因に応じた治療を行います。
①ブドウ糖の投与
重度の低血糖や、けいれん・意識障害などがみられる場合には、静脈内にブドウ糖を投与し、血糖値の改善を図ります。
必要に応じて持続的にブドウ糖を投与しながら、血糖値や全身状態を管理します。
②食事管理
食事不足が原因の場合には、食事の量や回数を見直します。
特に子犬や超小型犬では、一度に多く食べられないため、食事を複数回に分けることが大切です。
③原因となる病気の治療
インスリノーマでは外科的手術や内科的治療、副腎皮質機能低下症ではホルモンを補う薬物療法など、原因に合わせた治療を行います。
低血糖は、血糖値を改善するだけではなく、原因を特定して再発を防ぐことが重要です。
予後
低血糖の予後は、原因や症状の重さ、治療開始までの時間によって異なります。
食事不足などの一時的な原因であれば、適切な栄養管理によって改善が期待できます。
一方、インスリノーマや重度の肝疾患、感染症などが原因の場合には、基礎疾患の状態によって予後が左右されます。
また、重度の低血糖が長時間続くと、脳に障害が残る可能性もあります。
そのため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。
まとめ
犬の低血糖は、血液中のブドウ糖が不足することで、体や脳に十分なエネルギーが供給されなくなる状態です。
子犬や超小型犬では食事不足や体力の消耗によって起こることがありますが、中高齢の犬では腫瘍や内分泌疾患などが原因となっている場合もあります。
初期には元気がない、震える、ふらつくといった症状がみられ、重症化するとけいれんや意識障害など、命に関わることもあります。
特に、キシリトールを含む食品やガムなどの誤食は、急激な低血糖を引き起こす危険があるため注意が必要です。
低血糖は早期発見と適切な治療が大切です。
普段と少しでも様子が違うと感じた場合には、自己判断せず、お早めに当院へご相談ください。

