猫の腎臓病
猫は腎臓病が多い
猫は腎臓を構成する細胞などが人や犬に比べて一言でいえば弱い傾向にあります。高齢の猫の多数は腎臓から弱ってくるといっても過言ではありません。猫が食べなくなったり、痩せてきたりするとまずは腎臓病を獣医師は疑います。また近年は純血種の猫が増えてきており、それに比例して若齢で腎臓病を発症した子も多く見受けられます。
診断
血液検査
まずは血液検査にて数値を確認することがとても重要です。BUN(尿素窒素)やCre(クレアチニン)といった検査項目はとても重要です。単純に数値が高いと腎臓が悪くなっているといっても言い過ぎではないかもしれません。ただ、腎臓よりも悪い部分がないかどうかは精査していく必要があります。心臓が悪くないか、甲状腺などのホルモン系の病気はないか、糖尿病はないかなど確認すべきポイントは多岐にわたります。
あとは近年ではSDMAなどの項目も腎臓病を早期に発見するために重要な検査となっています。血液検査は簡便に実施することが可能で、第一に実施すべきものかと思われます。
超音波検査
血液検査にて腎臓関連の数値が悪いから腎臓の機能が落ちているとしても、その原因がどうなのかを深く調べていくことが重要です。そこでよく利用するのが超音波検査になります。腎臓の構造を画像的に確認していきます。ポイントは以下のものになります。
・結石の有無の確認
・腎嚢胞の確認
・腫瘍性変化の確認
などが大切な確認すべき点です。これらは血液検査だけでは判定が困難なため、画像での確認が絶対に必要になります。結石がある場合は、手術で摘出することが必要かどうか、腎嚢胞がある場合は利尿剤などの導入が必要かどうか、腫瘍性変化については転移や周囲の臓器への影響がどの程度あるかどうかなどチェックしていくことで、治療の方針が大きく変わってきます。
多発性腎嚢胞のような病態では遺伝的な問題があるかどうかの検査も可能で、専用の利尿剤を選択していくことが重要になってきています。
レントゲン検査
レントゲン検査は検査の重要性は低めになりますが、腎結石の確認には有用です。また腎結石だけでなく尿管結石や膀胱結石などの確認も同時に行うことが可能です。腎臓の大きさなどをみるときにも超音波検査に比べてサイズが確認しやすいという傾向もあります。
尿検査
腎臓病では尿検査も重要です。尿タンパクの有無や比重の確認など、たかが尿ですが、知れることは多数あります。尿検査の結果次第で治療方針がかわることもあります。
治療
飲み薬
腎臓病の治療ではまず飲み薬の検討を行います。血管拡張薬や吸着剤などが代表的な治療薬になります。飲み薬で腎臓の機能が改善することはなかなか無いのですが、悪化をそれなりに防ぐことはできます。食欲などがなんとか維持できていれば飲み薬は治療の一環として組み込んでいくべきものになります。
食事
フードの変更も検討のひとつです。腎臓はタンパク質に弱いという傾向があります。なので、当院では低タンパク質系の食事を提案しています。反対に糖質などが多い食事が良いかもしれません。肉や魚は可能な限り控えて、他のもので栄養をとっていくことが大切です。また飲水量もとても重要です。水を飲めば飲むほど腎臓のケアには役立ちます。ただ、飲んでといって飲んでくれるものではないので、難しい点もあります。少なくとも水を切らしてしまうことは危険だという意識が必要です。
点滴
腎臓病が悪化するとどうしても食欲が少なくなってきます。食欲が少なくなると同時に水を飲む量も減ることがあります。そうした場合は、点滴で水分を補ってあげることが大切です。点滴は皮下補液という短時間で完了するタイプと静脈点滴という持続的なタイプがあります。状況によって使い分けをして、適宜必要な治療を実施していきます。
腹膜透析
人間の医療では血液透析が第一選択になることがありますが、動物の場合、特に猫の場合は血液透析は現実的ではない部分があり、当院では代替療法として腹膜透析を実施することがあります。腹膜透析は血液にたまった老廃物を腹膜を利用して排泄させる方法です。治療を実施するのに時間がかかりますが、それなりの効果が得られる方法でもあります。ただ、体力もそれなりに使うことがあるので、初期段階というよりは末期の状況になった場合に検討すべき治療方法かもしれません。