犬と猫の尿管結石摘出手術
猫の尿管結石摘出手術
尿管結石とは
尿管結石は文字通り、尿管に結石ができる疾病です。
多くの場合は腎臓にできた結石が尿管に移動して、膀胱まで移動することなく尿管にとどまってしまいます。
シュウ酸カルシウムという結石が代表的です。
症状
尿管や腎臓にできた結石は痛みを伴うことがあり、食欲や元気の低下を引き起こすことがあります。
また、血尿などの症状がでてくることもありえます。
診断
レントゲンや超音波検査による画像診断が重要です。
ただ、多くの場合は結石は非常に小さく、見つけるのが難しい場合もあります。
また、レントゲンにうつりにくい結石のタイプもあるため、レントゲンでみえないからといって安心してよいわけではありません。
超音波検査では、まず腎盂や尿管の拡張などがないか慎重に見極めます。
結石そのものの存在が確認できれば一番ですが、よくみえないこともあります。
尿管での尿路閉塞が生じていた場合、腎盂拡張という現象が起こり、超音波検査にて明瞭な画像が描出できるようになります。
↑ 尿管結石の存在を超音波検査にて確認
尿管結石は超音波検査にて描出できるかどうか微妙なことが多いですが、レントゲンにて確認できれば、間違いなく存在するので、慎重にさぐります。
治療
治療の理想は結石の摘出となります。しかし、結石のでき方によっては摘出が困難な例もあります。
理想的な治療の順番とすれば、
結石摘出 > 尿管膀胱吻合 > SUBシステム > 腎瘻カテーテル設置
となります。
今回は結石の摘出例について掲載しています。
尿管結石摘出術
手術ではお腹の中央部を開腹して、尿管の存在を確認します。
尿管は脂肪などにつつまれていることもあり、慎重にさぐっていきます。
結石の存在が触知できれば、切開を加えて、結石を摘出します。
その後の縫合が大変になるので、切開領域はできるだけ小さくするべきです。
摘出後に慎重に縫合していきます。かなり細い縫合糸を使用して、場合によっては顕微鏡などを用いて縫合していきます。
強く締めすぎると尿管が閉塞してしまう可能性もあるので、力加減にも気を配ります。
縫合ができたことを確認しています。
ただ、見た目で大丈夫そうでも、尿の漏出や、閉塞がないかは、術後も時間をかけてみていくべきです。
尿路の閉塞などがないことが確認できれば、あとは食事療法などで再発がないようにこころがけています。
細かい作業を求められる手術ですが、うまくいって、経過も順調となり、キレイな尿が出るようになってくれるとうれしく思います。
犬の尿管結石摘出手術
拡張した尿管および結石の存在を触知します。猫に比べるとかなり大きく明瞭なことが多いですね。
切開を加えて結石の摘出を行います。結石が複数ある場合もあるので、取り忘れの無いように注意します。
切開した尿管を縫合して完了となります。できるだけ閉塞しないように意識します。
症例2
尿管結石の確認は超音波検査にて実施することが多くあります。
当院ではCT検査による描出も可能ですが、CT検査は麻酔と時間がかかるので、超音波検査で確認できることが一番ではあります。
腎盂拡張が認められたら、尿管の精査を行います。
さらには尿管結石の存在部位を確認して手術の術式を考えます。
できるだけ尿管結石は尿管切開による手術をすることが理想的です。
開腹手術の写真です。
尿管結石の存在が触知できれば、できるだけ、尿管の拡張部位を選択し、切開します。
切開は簡単なのですが、問題は縫合処置です。
非常に細かい作業となるので、実用に応じて、顕微鏡や手術用のルーペを使用して縫合をすすめます。
縫合に使用する糸もできるだけ細いものを選択しています。
術後は尿管閉塞の存在などに注意して管理してまいります。