犬の肩関節脱臼整復処置(非観血的整復)
犬の肩関節脱臼整復処置(非観血的整復)
肩関節脱臼について
肩関節脱臼はよく高齢の小型犬で、肩部に強い負荷がかかったときに発症します。
文字通り肩の関節が外れてしまう疾病です。
個人的な経験では比較的高齢のトイプードルに多く発症するように感じます。
肩関節が脱臼することによって、ほとんどの場合、患肢を挙上するようになります。
例えば、右肩が外れてしまったときは、右前足をあげるようになります。
また肩付近を触ると痛がるような仕草をみせることもあります。
肩関節が外れた症例になります。右の肩の関節がずれていることがレントゲンで確認ができます。
脱臼の診断はレントゲン撮影で容易に判別することができます。
レントゲンは一方向だけの撮影では診断を誤ることがあります。なので、必ず二方向での撮影が原則となっています。
縦と横でみることで、立体的な構造を把握することができます。
内側に外れているのか、外側に外れているのか、そのあたりは整復する際にとても重要なポイントとなってきます。
治療について
肩関節脱臼の治療は主に2つに大別されます。
一つは非観血的整復となります。包帯などで固定する方法です。
もう一つは手術による観血的整復です。
非観血的整復はなかなかうまくいかないことが多くありますが、手術も絶対というわけにはいかないので、個人的には非観血的整復がうまくいかなければ、手術をするように提言しています。
非観血的整復は麻酔をかけた状態で、脱臼を手で整復します。そのままグイっと肩をはめるイメージです。
当然痛がるので、麻酔の処置は必須になります。暴れたりしたらうまくできません。
肩がうまくはまったかどうかをレントゲンで確認していきます。整復ができていれば、次に包帯やテープを使用して、患肢を胸につけるようにして、折りたたんでいきます。
そして、包帯でぐるぐる巻きにして、患肢を地面につけないように固定します。
この固定の際に、強くしめすぎてもいけませんし、弱くしすぎてもズレたりするのでダメです。その力加減が非常に難しいところです。
うまく固定できれば麻酔を停止して、覚醒させます。
およそ1時間程度の処置になりますが、問題はここからうまく管理をしていくことになります。
関節を整復したときは、慎重に処置をすすめます。何度も何度もレントゲンで確認して問題ないかどうか見極めます。
経過について
当院では、非観血的整復後に1週間ごとの定期チェックを推奨しています。固定した肢を痛めたりしていないかどうか、関節が外れたりしていないかどうかなど重要なチェックポイントがあります。最低でも固定した状態を1カ月は維持したいところです。
処置して1カ月半ほど経過したレントゲン画像です。関節はしっかりしており、外れていません。もちろん、固定したテーピングなどは外した状態で、歩行も問題ありません。
もちろん横方向でも確認をします。このレントゲンを確認できたら、とても安心できますし、大変うれしく思います。
でも実際は、なかなかこの処置はうまくいかないことも多々あり、手術が必要になるケースがあります。
これはいかに愛犬がじっと大人しく生活してくれるかにかかっているのかもしれません。