犬の第三眼瞼腺癌(涙腺癌)
犬の第三眼瞼腺癌(涙腺癌)
病態
犬や猫のなどの愛玩動物も人間同様に悪性新生物(腫瘍性疾患)が死因の多くを占めるようになっています。
今回は癌の中でも腺癌というタイプのご案内となります。
そして腺癌の中でも、眼の周囲に発生するもので、第三眼瞼腺や涙腺を起因とする腺癌に関するご紹介です。
腺というのは体液を分泌する腺細胞でできた組織です。
第三眼瞼腺や涙腺は涙の成分を生成する腺となります。
その腺を構成する腺細胞が腫瘍化したものが腺癌となります。
腺癌は体液を分泌するので、分泌液が漏出したり、溜まったりするのが特徴的です。
第三眼瞼腺や涙腺以外にもたくさんあります。
有名なところでいくと、肺腺癌、腸腺癌、唾液腺癌などがあります。
診断
腫瘍の診断はその本体をみつけることでおおよそ診断が可能です。
超音波検査やレントゲン検査などの画像診断が非常に有用となります。
一方で血液検査などの数値でみるような検査は診断価値が高くはありません。
特に超音波検査は胸腔内や腹腔内だけでなく、眼周囲に関しても腫瘍の発生を明瞭に描出することができます。
当院では腫瘍組織を発見したら、積極的に針生検を実施するようにしています。
針生検を行い、採取した細胞を顕微鏡で観察することで、その細胞形態を評価することができます。
これを細胞診と呼びます。
細胞診では主にリンパ腫、肥満細胞腫、腺癌などの同定に役立てることができます。
それぞれ非常に特徴的な細胞形態をとっており、容易に診断することが可能です。
当院では細胞診を強みとしており、その診断に自信をもっています。
腺細胞は非常に特徴的な細胞形態が観察されます。腫瘍化した腺細胞はクロマチン濃縮の度合いや、核の大小不同など通常ではあまり確認されない異型性を示すことがあります。
治療
癌の治療は外科的な摘出手術、抗癌剤などの化学療法、放射線療法などに大別されます。
外科的な摘出手術が可能であれば、それが一番ではありますが、腺細胞は一般的にもろく脆弱な細胞であることが多く、分泌液を出すため、周囲に転移したり、影響が波及しやすい傾向にあります。なので、外科的な介入がうまくいかないケースが少なくありません。
近年では使用しやすい抗癌剤や分子標的薬が増えてきましたので、そうした治療も腺癌に対抗する手段としてはとても有効です。
特に当院では腺癌に抗腫瘍薬を使用することを積極的に実施しています。
効果の度合いは個体差がありますが、何もしないよりは寿命を延ばすことが期待できます。
また放射線治療については動物医療ではまだまだ発展途上であり、治療回数や治療費用などを考えても、多くを実施していけるレベルではないというのが現状です。