猫の肥大型心筋症
猫の肥大型心筋症
病態
心臓は血液を全身に送り届ける役割を担っており、そのほとんどが筋肉でできています。心臓を構成している筋肉を特に心筋と呼びます。肥大型心筋症はこの心筋が大きくなってしまう病気です。
筋肉が大きくなるのはまるで良いことのように思えますが、問題は筋肉が大きくなる半面、心臓に溜め込める血液の量が少なくなってしまうことが問題となります。血液が心臓にプールできなくなると、全身に送れる血液量が少なくなってしまいます。特に心臓から遠い、脳や後肢などは強く影響を受けてしまいます。内臓でいえば、肝臓は心臓に血液を戻す手前の臓器ということで影響を受けやすくなっています。
肥大型心筋症は高齢の猫で好発します。心臓が弱ることで、同じ循環器でもある腎臓の機能も低下してくることがしばしば見受けられます。また、甲状腺機能亢進症を罹患している猫でも肥大型心筋症は発症することが多くあります。
診断
肥大型心筋症の診断は超音波検査にて心筋の厚みを計測することで診断が可能です。健常な猫に比べて大きく腫れあがっているような心筋が確認できれば、ほぼ間違いありません。また近年では血液検査でも心臓の評価をすることができるようになってきています。当院では、心臓の検査の一環として、専用の血液検査を実施することを推奨しています。
レントゲン検査も時に有用とされていますが、超音波検査の方が正確な診断が可能となっています。
健常猫の超音波エコー検査所見
心臓の心尖部の画像になります。心室壁が正常な厚みであることが確認できます。
肥大型心筋症の猫では超音波エコーにて心室壁の肥大化が認められます。心室壁が厚くなることで、心臓から拍出できる血液量が減少してしまいます。
治療
本症では心筋の収縮力にトラブルが生じるため、心筋に作用する内服薬を使用して治療をすることがほとんどです。厚くなってしまった心筋自体はなかなか改善しませんが、血圧などは飲み薬で調整することができます。
また、腎臓や甲状腺の問題など併発する疾病があれば、必要に応じて治療を加えていくことが肝要となります。
予後
心臓病というのはいずれもそうですが、普段は元気そうにみえていても突然、調子が悪くなることがあります。要は突然死のようなリスクをかかえる状態というわけです。食べすぎや飲み過ぎに注意することはもちろん、激しい運動も控えるようにしておいた方がよさそうです。
また、猫の肥大型心筋症には随伴するものとして、動脈血栓塞栓症があります。動脈血栓塞栓症は後肢が突然立たなくなり、冷たくなる病態です。致死的な状態に陥るため、緊急的な処置が必要となります。当院ではバルーン拡張術などの施術により血栓症の対策にあたっています。