犬猫の胃瘻チューブ設置(PEGチューブ)
胃瘻(胃ろう)チューブ/PEGチューブ
食べたいけど食べれない、そんなときに胃瘻チューブを設置することを考えることがあります。
胃瘻チューブは口からではなく、胃に直接栄養を送ることができる医療デバイスになります。チューブは専用のものを使用して、簡単には取れたり抜けないようになっており、一方で、しっかり栄養を送ることができるようになっています。
PEGチューブ(ペグチューブ)とも呼ばれます。PEGはPercutaneous Endoscopic Gastrostomy(経皮内視鏡的胃瘻造設術)の略称であり、当院では内視鏡を使用することが多いため、PEGチューブと呼ぶことが多いです。
適用症例
PEGチューブの設置は、それ自体は比較的簡便に行うことができるのですが、その適用する疾患がとても重要になります。以下に代表的なものを記載しています。
口腔内腫瘍
例えば口の中に腫瘍ができて、食べ物をうまく呑み込めないなどの症状が出てきた場合は、胃に直接栄養を送る必要が出てきます。ただし、口腔にできた腫瘍を摘出することができれば、もちろん、その方が理想的ではあります。
下顎骨折
交通事故などで下顎を骨折してしまうケースがあります。下顎はものを食べるのに非常に重要な役割を果たしており、うまく食べ物が食べれなくなってしまいます。そして、骨折の手術をしたとしても、ものを食べれるようになるまで、一定の期間が必要になるため、PEGチューブの設置を提案させていただくことがあります。(近年はPEGよりも簡便に設置・除去ができる食道チューブを使用することが増えました。)
巨大食道など食道の問題
口と胃をつなぐ食道に問題が起きたときも胃瘻チューブはとても価値が高まります。特に犬の場合は、巨大食道という疾病が以前から知られており、全国的に罹患犬は多くいらっしゃいます。巨大食道は食べ物を食べるのですが、吐出してしまい、どんどん痩せていってしまう遺伝病になります。そこで、胃瘻チューブを利用することで、栄養がしっかりとれるようになり、長く寿命を全うすることができるようになります。
胃のトラブル(噴門部のトラブル)
胃にチューブを入れるので、胃に問題ある場合は非常に悩むのですが、例えば胃の入り口である噴門部に問題があるケースでは適用することができそうです。腫瘍性疾患がやはり多いかもしれません。一方で、胃の出口(幽門部)に問題がある場合はチューブを入れても、その問題点をクリアすることができないため、適用となりにくいかもしれません。
設置について
PEGチューブの設置は全身麻酔にて実施します。処置の時間はおよそ1時間程度になります。内視鏡などを使用して、チューブの設置位置を確認しつつ、確実にチューブを胃に設置するようにします。術後は洋服を着せて管理することがほとんどで、術後の洋服をある程度ご用意いただく必要があるかもしれません。(洋服が無いとチューブを噛んだり、掻いたりして不具合が出るケースがあるため)

チューブを設置できたら、設置後に少しずつ栄養を送るようにしていきます。一度に多くの栄養を入れると吐き出してしまうことが多いため、胃を慣らすように、毎日複数回に分けて給餌するようにしていきます。それでも1日3回は食事を与えていただく必要があることが多いかもしれません。