猫の乳び胸
病態
広島市のkonomi動物病院の栗尾です。
今回は乳び胸の症例についてです。
猫の乳び胸は胸管と呼ばれる胸部に走行するリンパ管の破綻により、リンパ液が漏出することにより発症します。
胸部に乳び液と呼ばれる液体が貯留することで、呼吸困難に陥ることがあります。
場合によっては開口呼吸を呈することもあるため、早急に乳び液を抜去する必要があります。
なお、腹部で同様の状態になることを乳び腹といいますが、乳び腹はあまり見ない稀な疾患です。
原因
外傷や感染症にともない発症する場合もありますが、多くは特発性(原因不明)であると考えられます。
とはいえ、乳び液は脂肪分がたくさん含まれています。栄養的な要因ももしかしたらあるのかもしれません。
治療
治療はまずは乳び液の抜液になります。当院ではエコーにより液体の溜まり具合を確認し、翼状針や留置針を用いて貯留液を抜きます。
多くの場合は無麻酔で行うことができますが、痛がったり暴れたりする場合は麻酔処置が必要なこともあります。
呼吸が不安定なので、できるだけ麻酔処置は避けたいところです。
必要に応じて内服による治療を実施しながら経過をみますが、数か月かけても状態が改善しない(何度も乳び液がたまってしまう)場合は、外科的介入が必要になります。
これまでは胸管結紮という方法をとられていましたが、再発率が高いという問題がありました。
そこで当院では費用はかかりますが、胸部と腹部にカテーテルを通すことにより乳び液の管理をする方法を推奨しています。
乳び液は白~赤色で濁った感じの液になります。よく見間違いやすいのが膿胸ですが、膿胸の場合はかなり臭いが強くあるので、簡単に判別できます。
生化学検査でも判定可能です。
胸に溜まった液体がなくなるとかなり呼吸状態は落ち着きます。また再発などしなければよいのですが。