犬の気管虚脱手術/気管内外ステント設置術|犬猫の治療なら広島市konomi動物病院

犬の気管虚脱手術/気管内外ステント設置術|犬猫の治療なら広島市konomi動物病院

犬の気管虚脱/気管内外ステント設置術

犬の気管虚脱の手術

気管虚脱について

広島市のkonomi動物病院 獣医師の栗尾です。
気管虚脱は小型犬で多く発生する呼吸器系の病気です。
気管を構成する輪状軟骨が弱くなることで、気道がせまくなってしまいます。
当然、気道がせまくなることで呼吸が不安定になります。
よくガチョウ様の咳をするというのが症状としてあらわれます。
診断はレントゲンでの気道の確認で、容易に状態をみることができます。

治療について

気管虚脱は症状が軽度の場合は内科的な治療が良いとされています。
主には内服ですが、近年は注射等による治療法もあります。
基本的には内科的な治療により中長期的な経過をみることができます。

しかし、気管虚脱の厄介な点は進行性の病気だということです。
内科的な治療により一時的に症状が緩和されたとしても、また悪化する可能性は非常に高くなります。
重度の呼吸困難を呈する場合は、外科的な介入が必要になるケースもあります。
外科的な処置は合併症も多数報告されているため慎重にならなければいけませんが、近年では効果的な手術が可能となってきています。

レントゲンにより気管虚脱は容易に診断が可能です。
気管がほそくなることでひどいせき込みを呈することがあります。

手術について

手術方法は主に2つあります。気管内ステントと気管外ステントになります。
気管内ステントは設置が容易です。問題は専用の器具をいかに用意するかと、費用の問題、適切なサイズの選択になります。
適切なサイズがなかったり、費用の工面が難しい場合は気管外ステントも考慮します。
気管外ステントは文字通り気管の外に設置するため装着後の異物感がないことが最大のメリットになります。
専用の手術道具を用意して気管を広げるように設置します。
気管に並行して走行する血管と神経をできるだけ傷つけないようにステントを設置しなければならないので非常に神経を使います。

非常に弱くなった気管は全く空気の通り道がないほどになってしまっています。
気管内チューブ等を用いて適切な気管のサイズ感をつかんでいきます。

ステントの設置は設置部位を入念に確認しながら実施します。
設置場所やサイズが決まればあとはひたすら縫合していきます。
この縫合作業に数時間かかることがあります。
手術する側としてはしばらくトイレにいけないことを覚悟しておく必要があります。

手術後にはレントゲンにて気道が広がっていることを確認します。
気道が広がってくれればひとまずは安心ですが、合併症も多数報告がありますので、気を抜かず経過をみていきます。

手術後について

手術しても簡単に呼吸状態が良くなるわけではありません。しばらくは不安定な状態がつづきます。
およそ2~3週間程度で落ち着いてきますが、それまでの間は、ICU等で酸素化された空間で治療を続ける必要があります。
小型犬の普及に伴い、増えている疾病のひとつになります。咳や呼吸困難はQOLを著しく低下させます。
できるだけ多くの命を救いたいと思います。当院はより良い治療、成績をあげるために頑張ります。

気管内ステントの設置

気管内ステントについて

頸部のみの気管虚脱の場合は、気管外ステントの活躍が期待できますが、胸部まで虚脱が進行している場合は、そうはいきません。
なので、必要に応じて、気管内ステントの設置を検討しないといけません。
ただ、気管内ステントにはメリットとデメリットが大きくあるため、その点をよく理解しておく必要があります。

メリットについて

胸部まで至る気管虚脱にも適応できるというのが最大のメリットですが、あとは設置が非常に容易で短時間で済むというのがあげられます。
ステントの設置が完了すると、呼吸状態は一気に楽になることが確認できます。
呼吸困難だった状態が、大きく改善するため、治療効果は一目瞭然ということになります。

一方で、気管外ステントは設置に非常に時間がかかり、麻酔管理についても慎重になる必要があります。

デメリットについて

正直、デメリットがたくさんある施術法にはなります。

①費用がかかる
②個体に合ったサイズがあるかどうか、もしあったとしても場合によっては、ステントを用意するのに時間がかかることがある
③異物を気管に設置するため、継続的な咳き込みがみられる
④ステントの形状変化や劣化が将来的に生じる可能性がある
⑤気管の壊死を引き起こす可能性がある
⑥設置後の抜去が基本的にできない

それぞれの問題が起こる可能性は低く、大きな障壁となることは少ないのですが、必ず考慮しておくべき事項とはなります。

気管虚脱に悩まされる症例はたくさんいるので、治療法にも、いろいろと問題はありますが、できるだけたくさんの命を救えるようになりたいです。