環軸不安定症の犬の一例(環軸固定術)
環軸不安定症の犬の一例(環軸固定術)
環軸不安定症について
小型犬で歯突起と呼ばれる軸椎の一部が形成不全または骨折を起こすことで環軸不安定症は発症することがあります。
本症例は外部からの物理的な衝撃により発症しました。
環軸とは環椎(第一頸椎)と軸椎(第二頸椎)の結合を指します。本来は強固に結合していなければいけない頸椎の椎体ですが、その結合が弱くなってしまうことが問題となります。
おおきく椎体がズレてしまうことで、椎体に保護されるべき脊髄神経が圧迫を受けて、痛みが出ます。
痛みの程度は様々ですが、重症例では、四肢の麻痺があらわれることがあります。
鎮痛剤やコルセットなどの治療で改善しない場合は、外科的な固定手術が必要となります。
環軸固定手術について
環軸不安定症に対しては腹側アプローチによる固定手術と背側アプローチによる固定手術の2通りの方法があります。
一般的には腹側アプローチの方が脊髄へのダメージ(合併症)が少ないとされており、今回も腹側アプローチによる施術を行いました。
頸部を切開すると気管および食道などが確認できます。それらを傷つけないように慎重に切開を進めます。
環椎軸椎の接合面を確認します。不安定の具合についても触知することができます。
環軸を固定するためにピンの挿入を実施します。ピンの挿入は間違えると脊髄神経を痛める可能性があります。進入角度や長さなど注意しながらすすめます。
ピンによる固定ができたら、最後に骨セメントを使用して、さらに固定を強化します。骨セメントの設置は時間との勝負となりますので、手術中はやや緊迫します。
手術が完了しました。術後もしばらくはコルセットを設置した状態で管理が続きます。コルセットを外して、症状の有無を引き続き確認していきます。