動物の院内ホルモン検査(内分泌系疾患)

動物の院内ホルモン検査(内分泌系疾患)

院内ホルモン検査

ホルモン検査について

ホルモン検査の重要性は個体に合わせた治療薬の選択が正確なものでなくてはならない点にあります。
血中ホルモン動態は全身に影響を及ぼします。わずかな増減が倦怠感を生み出したり、爽快感を感じさせたりします。
これまでホルモン検査は院外の検査センターに血液サンプルを提供して実施することがほとんどでした。現在でもその方法が主流ではありますが、上記の通り検査の結果に合わせた投薬量が重要ですので、早期に検査結果を得ることが重要になります。
当院では甲状腺ホルモンの疾患、副腎皮質ホルモンの疾患など代表的なものに対処すべく検査機器を導入しています。検査結果は即日判明するため、その場で個体にあった投薬量を判断することができます。

甲状腺機能低下症

ホルモン系の病気は比較的年齢依存性が高いように思えます。特に甲状腺のトラブルはその類です。甲状腺機能低下症は高齢の犬で多くみられます。運動不耐性や食べないけど体重が減らないなど。低下しているものに対しては
単純に補充すればよいのでホルモン剤の投与を考えます。その際に血中ホルモン濃度が重要になるので、定期的な検査が必要になります。

甲状腺機能亢進症

一方で高齢の猫に多いのが甲状腺機能亢進症になります。夜鳴きがひどくなったり、攻撃的になったり、食べてるけどやせていくといった症状が多くみられます。甲状腺機能低下症とは違い、補充すれば良いという簡単な話ではないので
、専用の投薬でホルモン動態をコントロールします。猫の場合はうまく薬が飲ませられないなど問題が起こることがしばしばですが、とにかく投薬を続けることが重要になります。

クッシング症候群

甲状腺についで多いのが副腎皮質ホルモンの問題です。ヒトでは難病指定されるようなクッシング症候群ですが、動物でも、特に犬では大きな問題となります。副腎皮質ホルモン過多により、免疫力低下、筋力低下、脱毛、石灰沈着、血栓、認知症など
さまざまな症状を呈します。クッシング存在下では甲状腺ホルモンの効果も弱まり、見かけ上の甲状腺機能低下に陥ることもあります。クッシングに関してはたくさんの薬が研究され、今ではかなり安全域が広がったように感じますが、それでも完治に至るような治療法はありません。
適切な検査結果を踏まえて、個体に合った投薬を正確にしていくことが重要です。

アジソン

クッシングとは反対に副腎皮質ホルモンの不足によりミネラルバランスが崩れ、嘔吐、虚弱、歩行困難などの問題を起こす珍しい病気です。レントゲンの撮影時に非常に小さくなった心臓をみることで疑うことができますが、確実なことを言うためにはホルモン検査が必要です。
こちらに関しては甲状腺機能低下症同様にホルモン剤の補充をするだけなので比較的良い治療効果を得ることができます。ホルモン測定と同時に血中ミネラルバランスを把握しておくことで病気のコントロールを正確にすることができます。

そのほか

上記疾病のほかにも内分泌系の疾患は多くあります。今のところすべての因子を院内で測定することはできないので、必要な場合は院外に外注検査を依頼することになります。今後、検査機器がさらに進歩すれば、治療の応用がきくかもしれません。